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大阪高等裁判所 昭和39年(行コ)54号 判決

控訴人 鳴海勝之助 外一名

被控訴人 中京税務署長

訴訟代理人 光広竜夫 外三名

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人らの負担とする。

事  実 〈省略〉

理由

当事者間に争いのない事実は、原判決理由記載(原判決七枚目裏末行から九枚目表七行目まで)と同一であるから、これを引用する。

そこで本件の争点たる本件土地が租税特別措置法(昭和三二年法律第二六号)第三五条にいう「居住用財産」にあたるかどうについて考えてみる。

成立に争いのない乙第四号証、第五号証、第八号証の一、二ならび当審における控訴人鳴海勝之助の供述の一部を総合すると、同控訴人の父はもと本件土地上に在つた家屋を所有してこれに居住していたが第二次世界大戦中強制疎開によつて取毀されたので、控訴人鳴海滋が昭和二二年頃先ず本件土地のうち同人所有分を買受け、更に同二六年一二月右滋の要請で地続きであるので控訴人勝之助が同人所有分を買受けたが、控訴人らはいずれも他に生活の本拠を定め、本件土地をその後全く空地のままに放置し、それが為め近所のごみ捨場になるにまかせ、将来は此の土地を処分して他に小さな古住宅でも購入しようと考えていたが、昭和三五年四月に至り漸く控訴人滋において右空地の利用を思いたち、同所に駐車場を建設してこれを経営するべく訴外三洋工務店に依頼して総額三二〇万円の見積りのもとに同地を右用途に適するよう整地して一隅に管理人室を建てる設計ならびに計画を定め、訴外山崎組に請負わせて右整地工事をほぼ四分の三程度了えた頃、近所の訴外乾織物株式会社から本件土地を買受けたい旨申入れがあつたので、たまたま控訴人勝之助が右滋の駐車場経営に不安を抱いていた折柄、右計画を中止して、本件土地を右訴外会社に譲渡したものであることが認められる。右認定に反する控訴人勝之助の当審における供述部分は直ちに信用しがたく、殊に控訴人らが疎開後昭和三五年迄の間、借家に居住していたことを以て一時の仮住居であると認めることは到底出来ないし、また、同控訴人の供述と原審証人小山常芳の証言によれば、同控訴人は控訴人滋の駐車場経営に不安を抱き、それをやめさせんがため、本件土地の約半分の地上に控託人両名のための住宅を建築することを考え始めたが、それは未だ具体化しておらなかつたことが認められるから、本件土地に関する前記認定をくつがえすのではない。

そうすると、右認定のもとにおいては、本件土地は前記法条にいう「居住用財産」に該当しないものというべきである。したがつて被控訴人が本件各更正処分において、控訴人らの本件土地の譲渡所得の税額算定にあたり前記法条にいう買換の特例を適用しなかつたことは適法であり、右処分につき控訴人ら主張のような違法な点は存しないから、控訴人らの請求を棄却した原判決は相当である。

よつて、民事訴訟法第三八四条、第九五条、第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 岩口守夫 岡部重信 安井章)

目録〈省略〉

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